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Report. 2


2026年制作《お留守番》油彩 F6/2月6日〜2月24日/33h
2026年制作《お留守番》油彩 F6/2月6日〜2月24日/33h

【絵づくりのアプローチ】

 今回は「第42回 全国日曜画家コンクール」を見据えて制作していきました。10年前に描いたアクリル画と同じ情景の作品を昨年油彩で描き直したのですが、それを改めて構図などを見直して再構築していきました。これまで通り絵具の色は下地にのみ茶色を使い、本制作としては2種類の赤、青、黄と緑、白を使用し、筆はフィルバートの10号と14号の2本のみを使用して描き進めていきました。

 

【制作の経緯】

 同じ情景の絵を再びこのタイミングで描くことになった理由は、事情があって急遽帰省することになったためでした。計画的に帰省する場合は、帰省中の制作のための画材や資料などの準備が前もってできるのですが、今回は急遽だったので、以前の資料を再利用して手軽にできる鉛筆デッサンをしようと考えました。そのデッサンで、ある程度整理できた構図を生かしたいと考えたことが、東京へ戻ってから描いたこちらの油絵に、結果として繋がっていくこととなりました。 

2025年制作《お留守番》油彩 F6
2025年制作《お留守番》油彩 F6

【前作の反省点】

 昨年のREPORT.15の振り返りの中で「今回、世界地図を描かない判断をしたことの是非については、今後の課題としたいと思います。」という記述をしました。実際の情景としては、白い壁の画面右上付近には世界地図が貼られています。それを10年前はそのまま描き込みましたが、昨年は省略しました。省略したことによってできた右上の空間を、グラデーションによって間が持つようにしていきましたが、モチーフが下に寄って見える構図になってしまったことに関しては反省点として残りました。

 

【前作からの変化】

 その反省を踏まえて今回は、画面を縦使いから横使いに変えて右上のスペースを狭くし、代わりにドアをより具体的に描き入れることによって構図の安定を図っていきました。ドアノブやドアと壁の境目まで描いたことによって、部屋の一角であるその空間がより鮮明になり、ゆったりとした時間の流れも生み出すことができたかもしれないと感じています。

 また、ドアの向こう側を薄暗くすることで、時間帯や室内の照明の明るさとの対比がより明確になるように構成していきました。背景部分の構成には、帰省時の観察がとても役立ちました。

 

【情報の取捨選択】

 何がどこまで入り込む構図にするかという選択は、絵づくりにおいて、とても重要な意味合いをもっていると思います。モチーフの視線の先にあるものを具体的に描きすぎてしまうと、親切かもしれませんが「答え」が明確すぎて広がりがなくなってしまいます。

 考え方として、10年前はそこにあるものを作り変えずにそのまま描くことに意味があると感じていました。昨年は、ヴァルールをシンプルにするためにも色の情報量が多い世界地図は省略し、ドアの描き込みは最小限としました。そこからさらに今年は構図を見直して、ドアを具体的に描き込んでドアに少し存在感と意味を持たせ、そのドアの向こうにあるであろう玄関にまで想像が膨らむように構成していきました。

 

【想像の余地】

 「一枚の繪 2026年6・7月号」の第117回 一枚の繪コンクールの総評において松尾直子先生は《カウンターの主》に対して「…視線の先に広がる想像の余地が印象的で、描かれていない画面の外にまで物語を感じさせる点に、この作品の大きな魅力を感じました」とコメントしてくださっています。絵画は平面作品ですが、画面内だけでは完結しない物語を感じられるような広がりや深みのある作品づくりを、これからも目指していきたいと思います。

 「答え」を描かない、含みを持たせるという意味では、池田晴明先生の作品のモデルさんがいつも“カメラ目線”から少し視線をずらしていることの理由も、その辺りにあるのかもしれません。

 

 【振り返り】

 描く度に見えてくるものが違うというところが、同じ情景を描くことの面白さのひとつだと思いますが、繰り返し描くことによって絵画として成長していくという実感を持てたことが、今回の大きな収穫でした。

 昨年描いた絵は「第118回 一枚の繪コンクール」に、今回の作品は「第42回 全国日曜画家コンクール」に応募しております。審査結果は共に、7月上旬に通知される予定です。それぞれがどのような評価をされるか楽しみですが、“水槽の上に乗っている”という状況をどう判断されるかは気になるところでもあります。近代日本美術協会の外部審査員であり日展会員、一水会会員の久保博孝先生は、昨年の近美展会期中「見る人に安心感を与える」ことの大切さをお話ししてくださいました。改善の余地は、まだまだありそうです。

 最後に、今作《お留守番》の参考資料と関連作品を並べました。

 

【使用画材】

キャンバス/リキテックス・ライトモデリングペースト/マツダ速乾性油絵具(習作用バーントシェンナ、習作用パーマネントイエローライト、習作用イエローオーカー、カドミウムレッド、習作用クリムソンレーキ、習作用コバルトブルー、習作用ウルトラマリン、習作用ビリジャン、パーマネントホワイト)/クサカベ・ネオペインティングオイル

 

【参考写真/2016年制作アクリル画/2025年制作油彩画/2026年制作鉛筆デッサン/2026年制作油彩画】 

Report. 1


本画《カウンターの主》油彩 F6/1月1日〜1月11日/45h
本画《カウンターの主》油彩 F6/1月1日〜1月11日/45h

【絵づくりのアプローチ】

 今回は「第117回 一枚の繪コンクール」を見据えて、2026年の元日から制作を開始していきました。エスキースは2025年の大晦日に制作した小さな油絵ですが、そちらを踏まえての制作となりました。

 今回最も重視したことは、「第115回 一枚の繪コンクール」へ応募した同じく猫の作品である《対峙》に対しての松尾直子先生の講評文です。そこには「骨格をしっかりと捉えており、緊張感ある表情も素晴らしい。口ひげや胸元、手足などの白い毛にもう少し影色を加えてもいいように思います。」とありました。“白い毛に影色を加える”とはどういうことか…いただいたヒントを自分なりに解釈し、絵としての一体感や目で見て自然に見える描き方を探っていく方向から、絵づくりのアプローチを進めていくこととしました。

 

【写真を参考にすることの盲点】

 白い毛の部分への指摘を受けて改めて資料にした写真を見直すと、白い毛の部分は松尾先生の指摘とは逆に、むしろ鮮やかに白く写っていました。しかし、よく見るとそれは写真の特性として“白いものがより白く”コントラストが強調されて写ってしまっているだけであることに気づきました。続いて、テーブルよりも上の位置にいる猫を撮影したため、照明の光を強めに受けてしまっていることにも気づきました。そして、それらを考慮した上で制作していなかったことに気づくこともできました。写真に写る色や大きさのバランスなどをどう整理して絵に変換していくか、しっかりと想像し組み立てていくことを心掛けながら今回の制作を進めていきました。

エスキース《ひとやすみ》油彩 ハガキサイズ/1月1日〜1月11日/45h
エスキース《ひとやすみ》油彩 ハガキサイズ/12月29日〜12月31日/12h

【構想】

 構図については画面を縦長か横長かどちらにするかスケッチをしながら考えましたが、ある程度高さのある場所にいることを表したかったので縦の空間を広く使える縦長使いの構図としました。エスキースは“白い毛の影色”を含め、モチーフである猫を捉えることに重点を置いて制作しましたが、本画ではカウンターテーブルを描き込んで具体的な空間が最小限伝わるように演出していきました。また、背景の色はグレー系を用いることが多かったのですが、明るさや温かさを出したかったため有彩色としました。色合いとしては「一枚の繪 2025年12・2026年1月号」掲載の橋本一貫さん《バラ》を参考にさせていただいております。

 

【松尾直子先生】

 今回の絵は松尾直子先生に「こういうことでしょうか」「これならどうでしょうか」と心の中で問いかけながら制作していきました。そこから発展し、「この場所にいるということはこうなっているはず」など、自分なりに考えて整理して試しながら描き進めていくことができました。

 白い毛の部分に影色を入れることでイラストから絵画になり、絵としての違和感がなくなってリアルさが少し表せたような気がしました。写真を資料として絵を描く上で考えたいことは何か…制作のアプローチの方法を見つめ直すきっかけをくださった松尾先生に感謝すると共に、松尾先生に宣言した(入賞としての)皆勤賞は途切れましたが、これからも「一枚の繪コンクール」“松尾先生の審査”皆勤賞を目指しつつ応募し続けようと思いました。

 

【「第117回 一枚の繪コンクール」秀作】

 5月21日発売の「一枚の繪 6・7月号」に「第117回 一枚の繪コンクール」の結果が掲載されているのですが、《カウンターの主》は秀作に選考してくださいました。講評文としては「端に寄せた構図に余白の美しさを感じます。猫の視線の先にある何かを想像したくなりますね。背景の単色ではない淡いグラデーションに体温のようなものが伝わってくるように感じました。」とあります。前回の猫の絵では、色に関する“表面的な”指摘を受けましたが、今回の絵では構成に対する“感覚的な”評価をしてくださいました。

 

 【振り返り】

 使う絵具の色の数や筆の本数はこれまで通りでしたが、絵を描く時に何を見て何を考えるかによって作品の方向性は大きく変わってくるということを今回学びました。絵画においてモチーフを実際よりも大きく描くことや、空間(余白)を広くとることは少しチャレンジではありましたが、イラスト界隈出身の自分なりの絵画をこれからも追求していきたいと思います。最後に、《対峙》の参考資料、エスキース、本画、松尾直子先生の講評文、《カウンターの主》の参考資料、エスキース、本画、松尾直子先生の講評文を並べました。

 

【使用画材】

キャンバスボード/リキテックス・ライトモデリングペースト/マツダ速乾性油絵具(習作用バーントシェンナ、習作用パーマネントイエローライト、習作用イエローオーカー、カドミウムレッド、習作用クリムソンレーキ、習作用コバルトブルー、習作用ウルトラマリン、習作用ビリジャン、パーマネントホワイト)/世界堂ペインティングオイル

 

【参考写真/エスキース/油絵作品/講評文】 

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