いつかの夢十夜 《二》

《第二夜》

ときどき、空を飛ぶ夢を見ます。

最近では、力のいれ具合によって、ある程度までなら

飛び方をコントロールできるようになりました。

 

空を飛べることは誰にも話したことがありませんでした。

しかし、あるときその秘密の“現場”を母に目撃されました。

そこで母は、僕をある映画監督に紹介してくれました。

 

監督の前で僕は、全力で空を飛び回りました。

思い切り高く飛んでから地面すれすれまで急降下したり

飛びながら壁を走ったり天井を走ったりしました。

 

その監督は映画の関係者に言いました。

「今はスタントの枠が埋まっているけど、将来彼の時代が来るだろうから、今見られてよかった」

 

過去最長となる一時間の飛行をした僕は着地してすぐ

全身にしびれを感じながら、爽やかに目を覚ましました。

そういう夢を見ました。

小山和哉